こんにちは!かさけんです。
僕はTwitterで2021年4月から図解を用いて毎日心リハ関連のツイートを投稿しています。
「心リハの知識を深めよう!」という目的で、8月にツイートした3つについて詳しく解説したいと思います。
- 浮腫の原因とその代表疾患まとめ
- 心不全の原因疾患
- ウォームアップ、クールダウンの重要性
はじめまして!
ハートリハブログのかさけんとはるです。
ご訪問ありがとうございます。
このブログは「心リハをたくさんの人に知ってもらいたい!」を
目的に夫婦で協力して作成しています。
急性期総合病院で心リハをメインに理学療法士として働いている。
心リハを始めて7年、心リハ指導士の資格取得をして5年。
2020年に心不全療養指導士の資格を取得。
はるの夫。記事の主な作成者。
看護師で混合病棟に6年在籍していた。
かさけんの妻。記事の編集やブログ運営をしている。
浮腫の原因とその代表疾患まとめ
心不全患者さんの代表的な症状として下腿浮腫があります。
しかし、心不全の患者さんの全員に下腿浮腫が生じているのかというとそうではありません。
急性心不全で入院された患者さんのうち下腿浮腫を認めた症例は67.7%だと報告されています。
つまり、心不全の患者さんと接する上で下腿浮腫を認めていない心不全の患者さんも少なくないということは知っておかないといけないことです。
浮腫を呈する機序ごとに分けた表が下図になります。
これを見てもわかるように浮腫が生じる原因は少なくとも5つあります。
中でも毛細血管圧の上昇、血漿浸透圧の低下の2つが原因で浮腫をきたす患者さんが多い印象です。
浮腫の理解をするためにはまず血漿浸透圧、静水圧の理解が必要です。
- 血漿浸透圧
-
血管内に水分を引き込もうとする力のこと
- 静水圧
-
血管から外(組織)へ水分を押し出そうとする力のこと
右図(上図)が正常な場合の動脈、組織、静脈の模式図です。
動脈側では浸透圧(25mmHg)よりも静水圧(35mmHg)が大きいため血管内から組織へ水分が移動します。
一方静脈側では浸透圧(25mmHg)より静水圧(15mmHg)が小さいため、組織から血管内に水分が移動します。
動脈側
浸透圧(25mmHg)<静水圧(35mmHg)
→ 血管内から組織へ水分が移動する
静脈側
浸透圧(25mmHg)>静水圧(15mmHg)
→ 組織から血管内に水分が移動する
血漿浸透圧と静水圧が等しければ組織へ水分が漏れ出しませんので浮腫は生じません。
このバランスが崩れると組織に水分が漏れ出れて浮腫を呈します。
次に静水圧と血漿浸透圧を用いて浮腫の機序について説明します。
静水圧上昇
心不全や腎不全では静水圧が上昇します。
*静水圧正常時15mmHg→心不全20mmHgと仮定
静脈側では静水圧が上昇するため、組織化から血管内へ水分を全て引き込むことができません。
すると、組織に水分が残るため浮腫をきたします。
血漿浸透圧低下
低栄養、ネフローゼ症候群では血漿浸透圧が低下します。
*血漿浸透圧正常時25mmHg→15mmHgと仮定
すると組織から水分が血管外に漏れ出て浮腫を呈するようになります。
以上の病態のほかに、血漿浸透圧上昇・リンパ管閉塞など様々な病態で浮腫を呈します。
次は浮腫を診るポイントについて説明します。
浮腫を診るポイント
静水圧上昇が原因で浮腫を呈しているのか?血漿浸透圧低下が原因で浮腫を呈しているのか?は浮腫の部分を押して回復時間によって判別できると言われています。
静水圧上昇:slow edma(浮腫が回復するのが40秒以上)
血漿浸透圧低下:fast edma(浮腫が回復するのが40秒未満)
実際には低栄養のを合併した心不全患者さんも少なくないので、あくまで指標として覚えておくと良いと思います。
心リハの運動療法前にも下腿浮腫は毎回確認しますが、心不全で必ずしも下腿浮腫を生じるということではないということの理解は必要です。
息切れや起座呼吸、頸静脈怒張など心不全の他の指標と一緒に確認する必要があります。
心不全の原因疾患
心不全とは「なんらかの心臓機能障害、すなわち心臓に基質的および/あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果、呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し、それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群」と定義されています。
JCS2017_tsutsui_h.pdf (j-circ.or.jp) P10 より引用
つまり、何かしらの心臓の疾患があり、それに増悪の原因が重なった結果、心不全の症状が出現するということです。
心不全で入院された患者さんには必ずその原因となる心臓の疾患があり、何かしらの増悪の因子があります。
運動療法や疾病指導をするにあたり、なぜ目の前の患者さんが心不全になったのかを考えないとその人に合った指導はできません。
心不全で入院された患者さんの原因疾患は多い順で下記の3つだと言われています。
- 虚血
- 高血圧
- 弁膜症
また近年、虚血が原因で心不全をきたしている患者さんが増加していると言われています。
これは食生活の欧米化による塩分過多や便利な世の中になったことによる運動不足などが原因で、高血圧や脂質異常症・糖尿病などの生活習慣病が増加したことなどが大きく影響しているのではないかと考えます。
心不全の原因疾患として虚血・高血圧・弁膜症以外にも、アルコール性心疾患・抗癌剤性・サルコイドーシス・アミロイドーシスなど心不全の原因疾患は数多くあると言われています。
原因疾患を知ることは患者さんの全体像を捉えることと、その病気が改善する可能性があるのかどうかを考える必要があります。
心不全患者の再発を防止するためには、なぜ心不全になってしまったのかを考える必要があります。
再発予防のための指導を行う上で、全員が同じ病態であることはまずありません。
1人1人の病態を捉えてその人にあった指導を行うためにも病態の理解、原因疾患を知ることは重要だと思います。
ウォームアップ・クールダウンの重要性
一般的な外来心臓リハビリテーションでは、以下の順に行われている施設が多いと思います。
バイタルサインを測定し、状態を確認する
ウォームアップ→ レジスタンストレーニングや有酸素運動を行う
運動後にはクールダウンを行い、手帳などを参考に生活の状況などを確認する疾病指導を行う
外来心臓リハビリテーションの中で運動療法が占める役割や時間は大きいですが、運動療法前後のウォームアップやクールダウンも非常に重要な意味を持ちます。
これは心血管疾患患者の運動療法中の合併症の72%はウォームアップやクールダウンの最中に起こると言われているからです。
運動療法中の合併症は有酸素運動中やレジスタンストレーニングを行っている最中に発生しやすいイメージを持たれている方は非常に多いと思います。僕自身も心リハを始める前はそう思っていました。
しかし実際に外来心臓リハビリテーションを行っていると、運動療法の最中よりウォームアップやクールダウンの時に不整脈が出現したり、迷走神経反射などで血圧が低下する場面に出くわすことが多いです。
- ウォームアップの時に合併症が出現する原因
-
心不全の状態が悪くなり始めている可能性があります。
問診やバイタルサインには異常所見が見られなくても、ウォームアップなどの低負荷の運動で心負荷が増大して心不全徴候が出現することが考えられます。 - クールダウンの時に合併症が出現する原因
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原因として一番多いのは迷走神経反射だと思います。
運動中には交感神経活性が上昇して心拍数や血圧を上昇させます。運動が終われば交感神経活性が低下して副交感神経活性が上昇してきて血圧、心拍数を低下させます。運動療法後に急に運動を停止させてしまうと急に副交感神経活性が上昇してきて血圧や心拍数が低下しすぎて気分不良や意識消失をきたす場合もあります。
特に高齢者や心疾患患者さんでは交感神経と副交感神経の切り替えに時間がかかったり反応が大きすぎたりすると言われています。
自宅で有酸素運動を行う前後でも軽い体操やストレッチといったウォームアップ、クールダウンは必ず行うよう指導しています。
まとめ
最後までご覧いただきありがとうございました!
8月にツイートした内容について詳しく解説してみました。
Twitterでは一目で分かりやすく臨床現場で実践してもらえるようまとめているので分かりにくい点もあるかもしれません。
もう少し深く知りたい、心リハに興味がある方、心リハを行っている方向けにこれからもこのシリーズを発信していこうと思います。
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