【心不全の増悪因子】心リハ指導士かさけんのツイート解説編

かさけん

こんにちは!かさけんです。

僕はTwitterで2021年4月から図解を用いて毎日心リハ関連のツイートを投稿しています。

かさけん

毎月恒例の「心リハの知識を深めよう」ということを目的で9月にツイートした3つの内容について詳しく解説していきたいと思います。

この記事で分かること
  • 血圧が低下する原因
  • 心不全の増悪因子「FAILURE」
  • 心不全と夜間頻尿
簡単な自己紹介

はじめまして!
ハートリハブログのかさけんはるです。
ご訪問ありがとうございます。

このブログは「心リハをたくさんの人に知ってもらいたい!」を
目的に夫婦で協力して作成しています。

かさけん

急性期総合病院で心リハをメインに理学療法士として働いている。
心リハを始めて7年、心リハ指導士の資格取得をして5年。
2020年に心不全療養指導士の資格を取得。

はるの夫。記事の主な作成者。

はる

看護師で混合病棟に6年在籍していた。

かさけんの妻。記事の編集やブログ運営をしている。

目次

血圧が低下する原因

血圧は心拍出量と末梢血管抵抗の積で求められます。
心拍出量つまり1回拍出量、心拍数と末梢血管抵抗のどちらかが低下しても血圧は低下します。

心不全とは全身の臓器に酸素を十分に含んだ血液を送り届けることができないことに始まり、様々な代償機構が働いて全身の臓器への血流を維持させようとします。

その代償機構の1つとして交感神経が活性化し末梢血管抵抗を増加させて血圧を上昇させる働きがあります。

しかし、血圧が上昇しすぎると後負荷、心負荷が増大して心不全になってしまう可能性もあり、血圧のコントロールは心不全のコントロールにも非常に重要な役割を持ちます。

下図は急性心不全の分類の1つであるクリニカルシナリオ分類です。

入院時の血圧を参考に主病態や病態生理、治療法について分類されています。

急性心不全に対する初期対応におけるクリニカルシナリオ分類のオリジナル画像

クリニカルシナリオ3は入院時の血圧が100mmHg未満であり多くは進行した終末期の心不全の状態を指します。
つまり入院時の血圧が低いことは重症だということです。

しかし、入院時の血圧が100mmHg以上あった患者さんの血圧が低下するというのは日常臨床でもよく遭遇します。

血圧が低くて倦怠感もあってぼーっとしている。尿量も少ない…というのは心不全の低灌流の所見かもしれないので血圧低下と関連する症状を把握することは重要です。

血圧が低下する原因として以下の4つを挙げました

  • 収縮力低下
  • 前負荷低下
  • 心拍数低下
  • 末梢血管抵抗の低下

中でも臨床現場でよく経験する2つ(前負荷・末梢血管抵抗の低下)について説明したいと思います。

前負荷低下

下腿浮腫や息切れで入院してきた心不全の患者さんがいたといます。

入院後から利尿薬を投与して体液コントロールを図りますが、その利尿薬が効きすぎてしまい血管内脱水になり前負荷が低下して血圧が低下することがあります。

血圧が低下、腎機能が上昇、倦怠感などの症状が血管内脱水の所見です。

そのような症状が出現している場合には利尿薬を減量、もしくは中止すると脱水が補正され腎機能が改善、血圧も上昇してくることもあります。

末梢血管抵抗の低下

背臥位から座位、立位に体位を変えると重力の影響で血液は下肢の方に貯留します。

下肢に血流が多く貯留すると心臓に帰ってくる血液量、つまり前負荷が減少するので、末梢血管抵抗を上げて前負荷を増やして血圧を維持しようとする働きが生じます。これが自律神経を介した正常な反応です。

ただ、臥床時間が長い、心不全が重症になると自律神経を介した調整に時間がかかるため座位や立位になっても末梢血管抵抗を上げることができずに血圧が低下することがあります。いわゆる起立性低血圧です。

このような場合には座位で足関節の運動を行ってから立位になることや下腿部に弾性ストッキングなどを装着することで対応可能です。

まとめ

正常な働きとして心拍出量が減少しても末梢血管抵抗を増加、また逆の反応をとることによって血圧が低下しないような代償機構が働きます。

それらの反応が遅延、機能しないと血圧が低下します。

また、心不全増悪の入院時の血圧が高いということはまだ心臓や体の反応は元気なんだとも言い換えることができます。

しかし、心不全を繰り返すうちに血圧を上げることができず、血圧が低下して循環不全をきたしてくるような病態になってきます。

血圧は心不全患者の病態や経過を物語っているとも言える指標です。

心不全の増悪因子FAILURE

2つ目に紹介するのは心不全の増悪因子の頭文字をとったFAILUREについてです。

ツイートまとめ8月でもまとめましたが何かしらの心臓の疾患があり、それに増悪因子が加わった結果、心不全の症状が出現してきます。その増悪因子は多岐にわたります。

急性・慢性心不全診療ガイドラインには数多くの原因疾患があると記載があります。

その中でもよく臨床現場で遭遇する増悪因子の頭文字をとった「FAILURE」は覚えやすくまとまっています。

FAILUREの7つの項目とそれに対する対策をまとめました。

【F】 Forgot medication
  • 内服薬の飲み忘れ
  • 通院の自己中断
対策
  • 薬剤師による服薬管理指導
  • ポリファーマシーの解消
  • 家族や第3者との情報共有(介護保険サービス活用など)
【A】 Arrhythmia Anemia
  • 不整脈
  • 貧血
対策
  • 不整脈に対する治療
  • 貧血の原因精査(消化管、腎機能)
  • 輸血、鉄欠乏・腎性貧血の精査
【I】 Ischemia Infection
  • 虚血
  • 感染症
対策
  • 血行再建
  • 感染症の治療
  • ワクチン接種の激励
【L】 Lifestyle
  • 生活習慣
対策
  • 減塩、水分指導を含めた生活指導
  • 過負荷の調整
  • 体重管理
【U】 Upregulation
  • 内分泌・代謝異常
  • 妊娠
対策
  • 甲状腺、副腎、下垂体疾患の精査治療
【R】 Regurgitation
  • 弁膜症
対策
  • 外科的治療
  • 心不全コントロール
【E】 Embolism
  • 肺塞栓症
対策
  • 抗凝固療法
  • 原因検索
  • 離床時間の確保
かさけん

心不全の増悪因子は数多く挙げられますが、増悪因子は必ず1つというわけではありません。

塩分も多く、頻脈性の心房細動で虚血の可能性もあり、肺炎を合併しているといった症例も少なくありません。

入院中の検査や治療だけでなく病歴や生活習慣を細かく聴取することでその患者さんの問題点が見えてきて、それに対して医療職者全員で関わることが再発予防に繋がるのではないかと思います。

心不全と夜間頻尿

3つ目は心不全と夜間頻尿についてです。

夜間頻尿の定義ですが、日本泌尿器科学会では以下のように定義されています。

夜間、排尿のために1回以上起きなければならない症状を夜間頻尿といいます。

夜間、何度も排尿で起きる | 日本泌尿器科学会 (The Japanese Urological Association)【一般のみなさま】

また、加齢とともに頻度が高くなり、日常生活において支障度の高い困る症状として知られています。

夜間頻尿の原因は大きく分けて以下の3つに分けられます。

  1. 夜間多尿
  2. 夜間膀胱容量の低下
  3. 睡眠障害

心不全の患者さんではこれらの3つ以外の理由から夜間頻尿が生じやすいと言われています。

心不全と尿量の関係を考えていきます。
尿は腎臓で作られます。腎臓では血液中の老廃物などを濾過して体に必要な要素は再吸収して不必要な要素を尿として体外に排出します。
つまり、腎臓への血流が少ないと尿量が少なくなるということです。

全身の循環についてまとめたオリジナル画像

腎臓は握りこぶし程度の大きさですが、安静時の全身血流量の約20%が腎臓に分布されていて、腎臓への血流量は多いことが分かります。

心不全は心拍出量の低下が主たる病態です。
日中は少ない心拍出量の中での食事を消化吸収するために肝消化管や動くのに必要な骨格筋へ血流を優先的に分配します。

しかし夜間には消化管や骨格筋に血流を送る必要がないため、日中に不足していた腎臓に血液を送られるようになります。
つまり、日中の腎臓への血流不足分を夜間に補っているということです。

日中と夜間の排尿機序についてまとえたオリジナル画像

また心負荷が増大すると、上昇するBNPも利尿作用があるため心負荷が増大していると尿量や尿の回数が増加することもあります。

心拍出量の低下を日中の腎臓への血流量低下を夜間に代償することや心負荷がこれ以上増加しないために、BNPの作用による排尿作用が働きますが、それ以上に心負荷が増大すると代償だけででは補うことができずに血行動態が破綻してしまいます。

代償機構では補うことができなくなればさらに前負荷を増やして心拍出量を維持させようとするため、尿量は減少してしまいます。

かさけん

夜間頻尿や高齢に伴い生じる症状の1つです。
ただ、これまで夜間頻尿ではなかった人が急に夜間頻尿になってきたことには注意が必要です。

また、夜間頻尿と労作時の息切れや下腿浮腫など心不全の症状と一緒に確認することが重要です。

まとめ

かさけん

最後までご覧いただきありがとうございました。
9月にツイートした内容について詳しく解説してみました。

Twitterでは一目で分かりやすく臨床現場で実践してもらえるようまとめているので分かりにくい点もあるかもしれません。

もう少し深く知りたい、心リハに興味がある方、心リハを行っている方向けに毎月続けていきますので宜しくお願いします。

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • いつも楽しく拝見させて頂いています。
    心リハに興味があるのですが、知識が追いつかないです。基礎的なところをわかりやすく一緒に勉強できるような記事があれば非常にありがたいです。またお時間ありましたら、ご検討ください。

    • コメントありがとうございます。
      とても貴重なご意見をありがとうございました。参考にさせていただきます!
      これからもハートリハブログをよろしくお願いいたします。

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