こんにちは!かさけんです。
抑うつは馴染みのない言葉かもしれませんが、心疾患の患者さんでは抑うつを合併している方も少なくありません。
また、抑うつによる症状が心不全のセルフケアを阻害したり、抑うつがあるだけで心不全の再発リスクが高いと言われています。
では心不全と抑うつの原因についてまとめていきます。
- 心疾患患者と抑うつの関連性・合併症
- 心臓リハビリテーションによる抑うつの改善効果
はじめまして!
ハートリハブログのかさけんとはるです。
ご訪問ありがとうございます。
このブログは「心リハをたくさんの人に知ってもらいたい!」を
目的に夫婦で協力して作成しています。
急性期総合病院で心リハをメインに理学療法士として働いている。
心リハを始めて7年、心リハ指導士の資格取得をして5年。
2020年に心不全療養指導士の資格を取得。
はるの夫。記事の主な作成者。
看護師で混合病棟に6年在籍していた。
かさけんの妻。記事の編集やブログ運営をしている。
抑うつとは?
心疾患と抑うつの関連性は少し前から注目されてきましたが、2021年改訂版の心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドラインの心臓リハビリテーションの目的に「抑うつの改善」が加わり、抑うつと何かを理解する必要性が増しました。
心疾患を有する患者さんは高齢化が進み、多くの併存疾患を有する患者さんが急増しています。
運動療法はもちろん心臓リハビリテーションの中心となる役割です。
しかし、運動療法以外のカウンセリングや個別面談を行うことによる心理社会的な介入も心臓リハビリテーションの構成要素であるため、心疾患と抑うつの関連性を知ることは重要です。
まず、抑うつという言葉はこのように定義されています。
抑うつは悲しみ、意欲喪失、絶望感、悲壮感、思考静止など心理的に落ち込んだ状態
抑うつ症状の特徴を分かりやすくまとめると、下記の3つの症状が挙げられます。
- うつ気分(落ち込む)
- 精神運動の制止(何もやる気が出ない)
- 不安焦燥感(落ち着かない)
どのような事を目的として心リハを行っているのか知ることは重要です。
心リハとして運動療法による運動耐容能増加、再発予防や長期予後の改善だけでなく、抑うつ症状を改善させるために心リハを実施しているという認識を持つと心リハの考え方が少し変わるかもしれません。
心疾患と抑うつの関連性
心疾患患者は心臓病を発症後に、身体についての不安や経済的問題、職場復帰や性的能力に対する心配から抑うつ状態に陥ることが少なくない
と言われています。
これまで経験したことのないような心疾患による症状を経験したり、自分の病気が今後どのように進行していくのか分からず、これからの生活について不安に感じることもあります。
また、心疾患は再発する可能性があるため再発しないようにすることが大事と医療従事者から説明、指導を受けると「自分の病気はかなり悪い」と心配される方も少なくありません。
抑うつの症状が動脈硬化の進展を促進させ、心拍数増加、血圧上昇、不整脈発生率が増加し、心負荷を増大させます。
これらの身体的な要因だけでなく、喫煙、飲酒、身体不活動といった治療アドヒアランスの低下などの生活習慣の乱れや、人間関係や引きこもりといった社会的要因など様々な因子が絡んで心血管病の発症リスクを増大させると考えられています。
心不全症状の易疲労性や睡眠障害などは抑うつの症状と共通しています。さらに心不全による活動制限が抑うつの症状を出現しやすくさせています。
つまり抑うつによる症状が心不全の症状を増悪させ、心不全の症状が抑うつを増悪させるといった悪循環に陥る可能性が高いという事です。
抑うつの症状が様々な要因で再発のリスクを増大させているということを理解してその患者さんに合った介入方法を指導していくことが重要だと考えています。
心疾患患者における抑うつの合併率
心疾患患者における抑うつの合併率は17~27%と一般人口での 10.3%に比べて高く、およそ3倍だといわれています。
特に 心不全の患者さんでは心不全が重症になるほどうつ病を有する割合が高く,NYHA心機能分類IV度では42%にもなるといわれています。
また心不全患者に抑うつを合併すると心不全の再発による再入院率や死亡率が高いということが報告されています。
また末期心不全においては約70%の患者さんが抑うつを経験すると言われています。
呼吸困難感や疼痛については薬剤でコントロールできる部分も多いですが、抑うつ症状については薬剤だけではなく、患者さんがどのような事に対して不安に感じているのかを聞き出すことが、患者さんのQOL向上に少しでも繋がると思い、コミュニケーションをとるように心がけています。
抑うつを合併している心疾患患者は決して少なくなく、その合併が再入院や死亡率増大と関連しているという事が分かります。
抑うつを合併しているのか評価しないと抑うつを合併しているのか分かりません。
抑うつを評価することが抑うつに対して介入する第1歩に繋がると思います。
抑うつの評価方法
では抑うつの評価方法についてまとめていきます。
心臓リハビリテーションの場面において抑うつの評価法として質問紙によるスクリーニング検査が多く行われています。
抑うつ状態のスクリーニング検査として推奨されていて、循環器領域でも使用頻度が高いのは、Patient Health Questionnaire for Depression Screening(PHQ)-9です。
- 国際的に広く医療機関で使用されている
- うつ病に診断基準に基づく9問のうつ病のスクリーニング検査
- 0~4点:症状なし、5~9点:軽症、10~14点:中等度、15~19点:中等度~重症、20~27点:重症
- 検査の所要時間:5~7分
PHQ9の短縮版でPHQ-2という検査方法があります。質問が2つと簡便な検査で、その2問のうち片方でも「はい」と回答した場合にはPHQ-9による再評価が必要とされています。
- この1 ヵ月の間、気持ちが沈み込んだり、憂うつな気分になったりすることがよくありましたか?
- この1 ヵ月の間、どうも物事に対して興味がわかない、あるいは心から楽しめなくない感じがよくありましたか?
またPHQ-9、PHQ-2の他に老年うつ病評価尺度(Geriatric Depression Scale:GDS)の簡易版であるGDS簡易版(日本語版GDS-15)の利用頻度も高いと言われています。
- 15項目の質問に「はい」「いいえ」の二択で回答
- 0点~15点で合計得点が高いほどうつ症状を有している
- GDS-15が5点以上もしくは6点以上の場合、臨床的なうつ症状を呈していると判定する。
これらの検査は専門職が不在であっても症状の有無や重症度を数値化できる簡便で有用な検査方法ですが、被験者が結果を容易に操作できてしまうという特徴があります。
質問の方法で「・・・・ですよね」「・・・・・と言ってましたが」など回答を誘導しないようにすることが検査の信頼性を向上させることに繋がります。
また軽症と評価した患者さんが実は中等症であることや、妄想や自殺念慮を伴うこともあり経過の中で重症化することも少なくありません。
抑うつの評価をする上で、質問紙による評価をすること自体や、検査結果が患者さんや家族のさらなる身体的・心理的な負担になる場合もあるため検査を行う際には十分注意を払う必要があります。
心臓リハビリテーションによる抑うつの改善効果
抑うつを改善させる方法として、下記を組み合わせることが効果的と考えられています。
- 抗うつ薬(薬物療法)
- 精神・心理的介入(認知行動療法)
- 運動療法
抑うつ症状があるのか評価し、適切な薬剤を処方し、専門職による精神・心理的介入を行い、適度な運動を行うことが望ましいとされています。
心不全患者に対して薬物療法、運動療法、認知行動療法などの心理的介入を包括的に用いることで抑うつの症状と不安が減少したとの報告があります。
また、ラットを用いた研究では運動療法を行うことによって抑うつを予防する事ができる可能性があるという報告もあります。
運動療法を行う事で筋力増加や骨格筋の機能改善に繋がることはイメージしやすいですが、運動を行う事で気分が晴れたり、動くことができたと患者さんが感じて希望を持つことができたりと運動には様々な効果があります。
また、面と向かって話すことも大事ですが、運動中のコミュニケーションや些細な会話から患者さんが病気のことをどのように捉えているのか、心配な点などを聞くことも多いのが実際です。
まとめ
最後までご覧いただきありがとうございました。
今回は「心不全と抑うつ」について詳しく解説してみました。
心疾患と抑うつの関連性を理解することは重要ですが、患者さんだけでなく医療従事者の認識も低いのが実際です。
この記事を読んで少しでも患者さんが病気のことをどのように捉えているのか、今後の不安点などを聞くきっかけになり、抑うつの評価、介入に繋がればこれほど嬉しいことはありません。
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