【心不全】心リハ指導士のかさけんツイート解説編

心リハ指導士かさけんの7月ツイートまとめ
かさけん

こんにちは!かさけんです。

僕はTwitterで2021年4月から図解を用いて毎日心リハ関連のツイートを投稿しています。

かさけんツイートのスクリーンショット画像
かさけん

前回の記事(2021年6月ツイートまとめ)と同様に「心リハの知識を深めよう!」という目的で、7月にツイートした3つについて詳しく解説したいと思います。

この記事で分かること
  • 心不全患者の息切れの原因
  • 心不全患者のACP実施を考慮すべき経過
  • 心不全患者における身体所見の低灌流・うっ血所見の感度・特異度について
はる

この記事は応用編になります。
まず心不全の基本的な部分について知りたい方は、こちらの記事がおすすめです。

簡単な自己紹介

はじめまして!
ハートリハブログのかさけんはるです。
ご訪問ありがとうございます。

このブログは「心リハをたくさんの人に知ってもらいたい!」を
目的に夫婦で協力して作成しています。

かさけん

急性期総合病院で心リハをメインに理学療法士として働いている。
心リハを始めて7年、心リハ指導士の資格取得をして5年。
2020年に心不全療養指導士の資格を取得。

はるの夫。記事の主な作成者。

はる

看護師で混合病棟に6年在籍していた。

かさけんの妻。記事の編集やブログ運営をしている。

目次

心不全患者の息切れの原因

心不全患者の息切れの原因についてのかさけんツイートのスクリーンショット画像

心不全の患者さんの一番多い主訴は息切れだと思います。
安静時の息切れはNYHAⅣ度であり、入院加療が必要な状態です。

CS-1の心不全のように急激に息切れが出現することもありますが、多くの場合は数ヵ月、数週間前から動作時の息切れが出現しています。

下記のグラフは心不全増悪で入院される患者さんが入院前にいつからどのような症状を経験したのか調査した研究です。

心不全で入院する患者さんが入院前にいつからどのような症状を経験したのか調査した研究についてのオリジナル画像

入院1ヵ月前から徐々に体重増加歩行時の息切れが出現していることが読み取れます。
そして入院の1週間前から起座呼吸や安静時呼吸苦など多くの症状が出現していることが分かります。

歩行時の息切れがある段階で利尿薬や降圧薬の投与、安静などの治療を行わないと、増悪をきたして入院することに繋がるため息切れの評価やその原因を知ることは重要です。

息切れの原因として肺うっ血を思い浮かべる方が非常に多いと思います。
もちろん肺うっ血が生じると肺胞でのガス交換障害が生じ、換気血流比不均衡に伴い、息切れが生じます。
しかし、肺うっ血がなくても息切れを生じる心不全患者さんは多いです。

肺うっ血による息切れ以外に以下4つが挙げられます。

  • 左室、左房の圧上昇に起因する息切れ
  • 換気血流比不均衡(呼吸様式に関連)
  • 中枢呼吸化学受容体のCO2感受性亢進
  • 骨格筋の神経性反射亢進

1項目ずつ詳しく解説していきます。

まずは、左室・左房の圧上昇に起因する息切れについてです。

左室、左房の圧上昇に起因する息切れ

心ポンプ機能が低下していると運動時に左室拡張末期圧が容易に上昇しやすく、その結果として左房圧、肺静脈圧、肺毛細管楔入圧が上昇して息切れが生じます。

休息を取ったり、運動負荷量を低下させると左室拡張末期圧が低下するので息切れは軽減します。
休息で症状が改善する間は良いですが、休息でも症状が改善しない場合は、循環動態が破綻している可能性があります。
息切れの有無だけでなく症状改善までの時間を評価することも重要です。

次は2項目目の換気血流比不均衡(呼吸様式に関連) についてです。

換気血流比不均衡(呼吸様式に関連)

呼吸様式も息切れに関係します。

呼吸回数が増加すれば下の図のように分時換気量は変わらなくても肺胞換気量が低下します。

歓喜効率 呼吸回数についてわかりやすくまとめたオリジナル画像


つまり、浅く速い呼吸は呼吸効率が悪く1回換気量や呼吸数が増加して息切れを感じることもあります。

次は3項目目の中枢呼吸化学受容体のCO2感受性亢進 についてです。

中枢呼吸化学受容体のCO2感受性亢進

延髄にある中枢の化学受容器は、動脈血二酸化炭素分圧の上昇を感知し換気を亢進させる働きがあります。

動脈血の二酸化炭素分圧が少し上昇しただけで換気が亢進する(二酸化炭素の感受性が亢進)と、1回換気量と呼吸回数が増加して息切れを生じやすくなります。心不全の患者さんでは二酸化炭素の感受性が亢進している症例は多いと言われています。

最後に骨格筋の神経性反射亢進についてです。

骨格筋の神経性反射亢進

心不全患者では慢性的な循環不全などが原因で骨格筋の萎縮や組成の変化があると言われています。

骨格筋の組成である遅筋のTypeⅠ線維が減少し速筋のTypeⅡ線維が増加します。
TypeⅡ線維では無酸素系のエネルギー産生が有意となるため、代謝物として二酸化炭素が産生されます。その結果、換気が亢進して息切れを生じやすくなります。

おすすめ参考文献
かさけん

息切れは患者さんが感じる感覚なので、血圧や心拍数、酸素化の低下などがなくても「息がしんどい」と感じる患者さんに対して「異常所見がないので大丈夫です」と言いがちになりますが、どのような運動で生じやすいのか、呼吸数の増加はあるのか、呼吸方法の指導で息切れが軽減するのか評価して患者さんの訴えをしっかりと評価することを心がけています。

次は心不全患者のACP実施を考慮すべき臨床経過についてです。

心不全患者のACP実施を考慮すべき経過

心不全患者のACP実施を考慮すべき経過についてのかさけんツイートのスクリーンショット画像

ACPとは、アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning)の略語です。

ACP意思決定能力が低下する前に患者や家族が望む治療と生き方を医療者が共有し、事前に対話しながら計画するプロセス全体を指し、終末期に至った際に、納得した人生を送ってもらうことを目標とします。

2017年に改訂された急性・慢性心不全診療ガイドラインに初めて緩和ケアの項目が追加され、心不全患者さんに対する緩和ケアの重要性が示されました

心不全は多くの場合、治療によって速やかに症状は改善するので、患者さんだけでなく医療従事者も予後に対する認識に現実と解離があると言われています。

心不全は急性増悪による入退院を繰り返しながらだんだん悪くなる病気です。
しかし、最期は急速に悪化していくためいつから終末期なのかの判断が非常に難しいです。

このツイートのように心不全の診療ガイドラインにはACPを考慮すべき臨床経過が記載されていますが、症状が増悪してから、繰り返すICDの作動、静脈強心薬の開始時など状態が悪くなってからACPを行うのは既に遅い場合もあります。

そのため配偶者の死亡などのライフイベント発生時1年ごとの定期外来および初回の心不全入院退院時や退院後での介入ACPの導入を行うことができればよいと考えます。

参考にした文献
かさけん

入院してきた心不全の患者さんにいきなり「あなたの価値観はどのようなものですか」「やり残したことはありませんか」と尋ねても入院してきて状態が安定していない場合や反応に困ったりと自分のことと捉えにくい場合が多いです。

心不全はだんだん悪くなる病気」ということを入院の間に患者さんに伝えてまず自分の病気のことを知ってもらうことが大事だと思います。

最後は心不全患者における身体所見の低灌流・うっ血の感度・特異度についてです。

心不全患者における身体所見の低灌流・うっ血の感度・特異度について

心不全患者における身体所見の低灌流・うっ血の感度・特異度についてのかさけんツイートのスクリーンショット画像

急性・慢性心不全診療ガイドラインには慢性心不全の診断フローチャートが作成されています。

心不全を疑わせる患者さんに対してまず行うことは、症状や既往歴・患者背景を確認して、心電図、胸部X線画像検査とともに身体所見を評価することだと記載されています。

心電図や胸部X線画像検査はすぐに実施できる検査ではないので、すぐに状態を評価することができるのが身体所見です。

心不全の診断における身体所見ついてのかさけんツイートのスクリーンショット画像

次に感度・特異度について説明します。

感度とは、疾患がある群における検査の陽性率を指します。
感度が高い検査は疾患を有するにも関わらず陰性と判断される割合が低いので、陰性の場合には疾患を有していない可能性が高いと言えます。

つまり病態を除外する除外目的で使用されることが多いのが感度が高い検査です。

特異度とは、疾患がない群における検査の陰性率を指します。
特異度が高い検査は病態を有していないにも関わらずに陽性と判断される割合が低いので、陽性の場合には疾患を有している可能性が高いと言えます。

つまり病態を確定する目的で使用されることが多いのが特異度が高い検査です。

次は上記の内容を踏まえた上で、心不全の身体所見における感度特異度について考えてみます。

うっ血の感度が高い検査の1つに起座呼吸があります。

起座呼吸についてのかさけんツイートのスクリーンショット画像
かさけん

つまり起座呼吸がない(陰性)場合には心不全の可能性が低いといえる検査だと言えます。

特異度について見てみると、頸静脈怒張が心不全の特異度が高い検査の1つです。

経静脈怒張についてのかさけんツイートのスクリーンショット画像
かさけん

つまり頸静脈怒張がある(陽性)場合には心不全の可能性が高いと言える検査だと言えます。

また、心不全患者の症状の1つである下腿浮腫については感度41%、特異度が66%だと報告されています。

つまり下腿浮腫は心不全を診断する感度、特異度が低い検査です。
下腿浮腫がなくても心不全である場合や下腿浮腫があっても心不全でない場合も少なくないので注意が必要です。

かさけん

心不全を診断する身体所見は数多くあります。
どの検査がどのような感度、特異度なのか知っておくことは患者さんの評価をするうえで重要だと思います。

僕はうっ血の評価は起座呼吸の有無と頸静脈怒張を、低灌流の評価は四肢冷感と脈圧をルーティンで確認するようにしています。

最後に

最後までご覧いただきありがとうございました。

7月にツイートした内容について、「心リハを深めよう」という目的で詳しく解説しました。

Twitterでは140文字+画像で発信するので重要な点のみを選択する必要があります。

要点だけなので分かりやすいこともありますが、もう少し深く知りたいという心リハに興味のある方、心リハを行っている方向けに毎月続けていければと思います。

他にもこのブログでは心リハに関連した記事を投稿しています。よければほかの記事も覗いてみてください。

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