こんにちは。かさけんです。
僕は心不全療養指導士の制度が始まった2020年の第1回に心不全療養指導士を取得しました。
心不全療養指導士は病院から退院後の生活まで幅広く心不全の患者さんをサポートすることができる資格です。
この資格を取ることによって先見据えた関わりができることに繋がります。
今回は心不全療養指導士とはどのようなものなのか、資格取得がスムーズに行えるように、症例報告書や試験勉強についてまとめました。
- 心不全療養指導士について知りたい方
- 心不全療養指導士の試験を受けたいもしくは受験を検討されている方
- 心不全療養指導士の受験に必要な症例報告書に苦戦している方
- 心不全療養指導士の申請について知りたい方
心不全療養指導士とは
心不全療養指導士は日本循環器学会が認定する資格です。
様々な医療専門職が質の高い療養指導を通し、病院から在宅、地域医療まで幅広く心不全患者をサポートすることを目指して取得する学会認定の資格
心不全療養指導士 – 日本循環器学会 (j-circ.or.jp)
どんな資格なのか一言でまとめると「心不全に関する知識を持って療養指導ができるだけでなく、病院、病院外を繋ぐ中心的な役割を担う事ができる資格」です。
心不全療養指導士に求められる役割はHPにこのように記載されています。
- 心不全の発症・進展の予防の重要性を理解し、その予防や啓発のための活動に参画することができる
- 心不全の概念や病態、検査、治療について理解し、それをもとに病状などを把握することができる
- 心不全の進展ステージに応じた予防・治療を理解し、基本的かつ包括的な療養指導を実践することができる
- 医療機関あるいは地域での心不全に対する診療において医師や他の医療専門職と円滑に連携し、チーム医療の推進に貢献することができる
- 心不全患者に対する意思決定支援と緩和ケアに関する基本的知識を有している
求められる役割からも分かるように心不全療養指導士は心不全の予防にはじまり療養指導、緩和ケアまで心不全に関するスペシャリストです。
病院と自宅や地域、医療者と患者家族をつなぐ架け橋的な存在になる資格だと言えます。
自分が患者さんの療養指導を行うだけでなく、心不全チーム医療の中心的な役割を担うことができる資格です。
次はその心不全療養指導士の合格率についてまとめました。
心不全療養指導士の試験合格率
試験の合格率は第1回、第2回目ともに80%台後半と高い合格率でした。
心不全療養指導士は心不全の療養指導に必要な基本的知識および技能などの質の向上を図ることを目的に創設されたので、高い合格率は今後も続くかもしれません。
次は心不全療養指導士の受験資格についてまとめました。
心不全療養指導士の受験資格について
心不全療養指導士を取得するためには、下記の6点の受験資格を満たす必要があります。
- 日本循環器学会の会員(正会員または準会員)であり年会費を収めていること
- 以下の資格を有すること
- 看護師、保健師、理学療法士、作業療法士、薬剤師、管理栄養士、公認心理士、臨床工学技士、歯科衛生士、社会福祉士の国家資格
- 現在、心不全療養指導に従事していること
- 受験者用eラーニング講習を受講し、修了証を取得していること
- 症例報告書5例を不備なく記載し、提出していること
- 申請書類を不備なく記載・提出し受験料を納めていること
おおまかな心不全療養指導士の資格取得までのスケジュールを下記にまとめました。
例年6月~7月に申請を行うため、最低でも6月中には入会しましょう。
4月1日から視聴可能(総視聴時間は約6時間)。7月31日までに修了証が必要です。
5例の症例報告書の提出が必要になります。
例年7月31日までに受験申請書と症例報告書の登録が必要です。
オンラインで作成した書類を出力して提出します。(期限は例年8月初旬)
認定試験の受験に進むことができます。
試験勉強については下記にまとめています。
では一つずつ解説していきます。
日本循環器学会の会員であり年会費を納めていること
心不全療養指導士を受験するには、日本循環器学会の会員になることが必要となります。
日本循環器学会の入会ページはこちらになります。
心不全療養指導士は医師以外の医療従事者を対象とした資格なので、心不全療養指導士を取得するためであれば正会員でなく準会員での入会で問題ありません。
心臓リハビリテーション指導士は日本心臓リハビリテーション学会に入会してから2年経過する必要がありますが、心不全療養指導士は試験を受ける年の入会でもその年の試験を受けることができます。例年6月~7月に申請を行いますので、その時点までに入会しておけば問題ありません。
日本循環器学会に入会することで、日本循環器学会学術集会や日本循環器学会主催のセミナーの参加費が会員価格で参加、受講可能になるので心不全療養指導士の資格取得以外にも入会のメリットはあります。
次は受験可能な資格についてです。
受験可能な資格について
2023年1月現在では、11の職種が受験可能となっています。
(※学会専門医の推薦を受け委員会が承認すれば、下記以外の資格をお持ちの方でも受験が可能です。)
心不全療養指導士は保健師、歯科衛生士、社会福祉士が受験可能な資格となるのが特徴的です。
心臓リハビリテーション指導士はこれらの職種は受験できません。病院だけでなく、患者さんが生活する地域でより必要とされる資格であるということが、受験可能な資格からも読み取れます。
また、ホームページには会員の名簿を都道府県別、資格別で検索が可能です。
検索してみると、こちらに挙げている資格だけでなく、臨床工学技士、言語聴覚士、診療放射線技師の方も取得しているようです。
自分が勤務する地域でどのくらいの方が心不全療養指導士を取得しているのか確認してみてください。
受験可能な資格以外に記載されている資格以外でも、学会専門医の推薦を受け、委員会が承認すれば受験資格を得ることができます。詳細は以下のページを参照ください。
受験者用eラーニング講習を受講し、修了証を取得していること
受験の申請前には、eラーニングの講習を受講する必要があります。
約6時間の講習を全て視聴し終えると、修了証が発行されますので、申請時にその修了証を添付する必要があります。
このeラーニングの受講費用は5,000円となっています。
2022年度版のeラーニングのカリキュラムが公開されています。
心不全療養指導士認定試験ガイドブックに沿ってカリキュラムが構成されています。各章の要点を押さえた講義なのでガイドブックにマーカーで線を引きながら学習しました。
日頃から心不全の療養指導を行っている方からすると知っている内容もありますが、知らないまたは分かったつもりだったことに気付かされることもあります。
テキストで読むとなかなか頭に入らない人でも動画を聴講し耳にすると頭に入りやすいこともあると思います。また、重要な点のみを解説した内容で、試験当日まで視聴可能なので繰り返し確認しましょう。
症例報告書について
難関ポイントの1つが症例報告書です。
心不全療養指導を受験するためには、5例の症例報告書の提出が必要となります。
症例報告書の目的と選定方法についてまとめました。
症例報告書の目的
症例報告書は、心不全診療に従事していることを証明するために記載する必要があります。
心不全療養指導が実践できていることを証明するために心不全の病態や経過、療養指導をまとめる症例報告書が必要となります。
症例テーマは下記に示す8項目から選択する必要があります。
- 心不全発症予防のための療養指導ステージA・B
- 初発心不全への療養指導ステージC
- 繰り返す心不全患者への療養指導ステージC
- 難治性心不全患者に対する療養指導ステージD
- 人生の最終段階にある心不全患者への療養指導ステージD
- 高齢心不全患者への療養指導
- 心臓手術を受けた周術期の患者への療養指導
- 多職種連携・地域連携の強化が必要な患者への療養指導
この中からテーマに偏りがなく、5症例が同じテーマにならないように症例を選択する必要があります。
記載項目は以下の4つのパートに分かれています。
- 患者背景:身体的側面以外の心理・社会的側面に関する情報を整理する
- 心不全の病態:心機能を中心とした身体的な側面の情報を整理する
- 心不全治療:心疾患・心不全(予防も含む)最善の治療が提供されているか
- セルフケアの状況:心不全の指導状況とセルフケア能力の査定(サポート状況)・疾病管理の状況
また、査読判定の基準についてもHPに明記されています。各項目にどのような事を記載すべきなのか意識してまとめる必要があります。記載例として良い例、悪い例が職種別で挙げられていますので参考になります。
症例報告書の悪い例の特徴として、下記4つが挙げられます。
- 記載されていない項目がある
- 具体的な情報や評価ができていない
- 該当テーマに沿っていない
- 療養指導した結果、どのような結果が得られたのか記載されていない
目の前の患者さんは今、どの心不全ステージで、どの目標を達成するためにどのような療養指導を行うべきなのか、そのためにはどのような情報や評価が必要なのかを考えながら日頃から心不全患者さんと接することが重要です。
次は症例の選び方についてです。
症例の選び方
症例の選び方が一番重要となってきます。
各テーマに沿った患者さんを選ぶと患者さんが限られてしまうので、これまで関わってきた印象に残っている患者さんがどこのテーマに該当するのかという視点で選ぶことが大事です。
例えば、高齢の初発ではない心不全の症例を選ぶとすれば、「繰り返す心不全」または「高齢心不全」、「多職種連携、地域連携」の3つのテーマに該当する可能性が出てきます。療養指導としてどこに力を入れたのかを考えてどのテーマになるのかが見えてきます。
基本的な情報も必要ですが、症例報告書は療養指導や介入による結果に重点が置かれているので、苦労した症例ということは問題点やアセスメントができているという裏返しになるので、選択する症例の候補になってきます。
心不全療養指導士は病院と地域の架け橋になる資格です。
自分が担当している患者さんの情報をサマリーや情報提供書として紙面で他者と共有することも少なくありません。症例の必要な上昇を端的にまとめる能力も問われているということになります。
次は、心不全療養指導士の受験料と受験に必要な提出物についてです。
心不全療養指導士の受験料と受験に必要な提出物について
受験料は15,000円となります。
オンライン上で申請(申請書と症例報告書)後に、受験料振り込みに関するメールが届きます。
- 日本循環器学会入会金(2,000円)、年会費(8,000円)
- 受験料(15,000円)
- e-ラーニング受講費用(5,000円)
- テキスト費用(3,960円)
合計 33,960円
以上が揃うとオンラインと紙面で書類提出し、書類審査後に認定試験となります。
オンラインと紙面での提出が必要な書類についてまとめました。最新の情報はホームページを確認してください。
- 心不全療養指導士受験申請書
- 症例報告書(5例)
- チェックシート
- 心不全療養指導士受験申込書(写真必要)
- 国家資格証のコピー
- 症例報告5症例(所属長の印鑑必要)
- E-ラーニング修了書
- 受験料を振り込んだことが確認できるもの
オンライン書類送付後、11月中旬に受験資格審査の合否の連絡があります。
次は、試験についてまとめていきます。
心不全療養指導士の試験の概要について
認定試験は例年12月の中旬に開催されます。
第1回目は2020年12月に開催され、全国4~5か所での開催が予定されていましたが、感染対策のため47都道府県に試験会場が設置されました。
試験はマークシート形式です。問題数は80問でした。
4つの選択肢から正しいものを1つ選ぶ、もしくは2つ選ぶ、または間違っているものを1つ選ぶという問題構成でした。
試験は13時から15時までとなっていますが、試験開始1時間を経過した時点で退出が許可された記憶があります。
次は、試験内容についてです。
心不全療養指導士の試験内容について
心不全療養指導士の認定ガイドブックに沿った内容が試験に出題されます。
✓テキストを読む
テキスト内の重要な所には下線が引いてあります。その用語や数字を覚えることから始めましょう。
あとはeラーニングをテキスト内にチェック、アンダーラインを引きながらを視聴すると効率よく学べます。
✓テキストの巻末の知識確認問題
テキストの巻末には知識確認問題が37問用意されています。
この問題がそのまま出題されるという事ではありませんが、似た内容が出題されます。
巻末の知識確認問題は間違わないように解けるようにしておきましょう。
心臓の解剖や病態、治療、検査、療養指導など幅広い範囲から問題が作成されていました。
僕が受けた第1回には併存疾患の治療としての睡眠時無呼吸症候群や在宅診療に関する問題などの問題が出題されました。
日頃から心不全患者さんと接することがある医療従事者であれば試験に合格するのは難しくないと思います。
目の前の患者さんがなぜ心不全になったのか(診断・解剖学・生理学)、どのような治療をして(治療)、どのような療養指導をすべきなのかという一連の流れを勉強しなおすことに繋がります。
心不全療養指導士の試験対策はテキストの読み込みと巻末の知識確認問題が鍵になります。
心不全療養指導士の資格更新について
心不全療養指導士では資格の更新が必要です。
資格の有効期間:5年 更新審査料:10,000円
- 日本循環器学会の会員を資格有効期間中継続し、年会費を完納している
- 日本循環器学会学術集会に5年間の中で1回以上参加している
- 5年間で50単位以上取得している
- 症例報告5例の提出
心不全療養指導士の更新のための単位はこちらにまとめられています。
日本循環器学会と日本心不全学会の学術集会の参加と発表、両学会が主催するセミナーへの参加が更新に必要な単位となります。今後、参加や発表に対して単位が付与される学会は今後拡大を検討されています。
学会での発表経験がなくても、5年間に数回の学会参加、コメディカルセミナー、教育セミナーに参加すれば50単位を取得するのは高いハードルではないと思っています。
最後に
最後までご覧いただきありがとうございました。今回は心不全療養指導士についてまとめました。
病院と地域、患者と家族を繋ぐ心不全医療のリーダーになることができる資格だと思っています。
心不全患者さんは今後も高齢化し、増加してくることが予想されています。病院だけでなく地域で心不全の患者さんを診る機会が増えることは容易に予想されます。心疾患だから…病院じゃないから…といって避けては通れなくなるかもしれません。
『心不全療養指導士』自分のスキルアップだけでなく、目の前の患者さんの為に目指してみませんか。
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